EUがスマホの脱着式バッテリーの義務化を検討中。日本への影響は?
ヨーロッパではスマホの充電・USB企画をType-C(USB-C)に統一することが義務化され、iPhoneも2024年販売分からはType-C接続が可能になると言われています。
ヨーロッパではスマホのUSBの企画をType-Cに統一するだけではなく、スマホやタブレットのバッテリーを脱着可能な物を搭載することを義務化する準備も進んでいます。
EUはこれらの動きはSDGs(持続可能な開発目標)や環境問題を考慮した結果であると説明しています。
この記事に書いてること♪
脱着・交換可能なバッテリーの義務化
EUの主要機関のひとつ「欧州議会」は2022年3月に、バッテリー内蔵機器(スマホ、タブレットを含む)のバッテリーを脱着式にすることを義務化する法案を採択しました。
対象になる製品はスマホだけでなく、タブレット・デジカメ・ゲーム機など多岐に渡ります。
電子機器の内蔵バッテリーは全て、リサイクルが可能にすることを前提として脱着式にすることを2024年までに実現する努力を義務化する法案です。
欧州議会はこの決定について「バッテリーメーカーは電池性能と寿命の開示が要求されるようになる。そのため、より高品質で長寿命なバッテリーが購入可能になる」としています。
かつて、ガラパゴス携帯(ガラケー)の時代は脱着式のバッテリーが一般的でした。
しかし、スマートフォン(スマホ)が普及した現在、多くの製品のバッテリーは本体と一体化されており、取り外しができなくなっています。
脱着式バッテリーの良い点
スマホのバッテリーが脱着式になることによるメリットはいくつかあります。
バッテリー故障時の修理・交換が簡単になる
スマホのバッテリーが脱着式になると、バッテリーが故障した際の修理・交換が簡単になります。
ガラケーの頃と同じように、スマホの裏のカバーを剥がしてバッテリーを交換するだけのはずです。
バッテリーの修理のためだけに何万円も払う必要はなくなるでしょう。
急速充電の規格も統一されるかもしれない
スマホの充電時間を短縮できる「急速充電」は一般化しているため、皆さん利用していると思います。
しかし、急速充電は様々な規格が乱立している状態です。
急速充電の恩恵を得るためには「スマホが対応している充電規格」「充電規格に対応しているケーブル」「充電規格に対応しているプラグ」が必要です。
自分のスマホがどの急速充電に対応していて、どの充電器をどのケーブルを使って接続すればよいか、非常に分かりづらいですよね。
脱着式バッテリーが義務化された場合、バッテリーの規格も統一しようとしてくるはずです。
そうなれば、バッテリーが使用する急速充電の規格も統一されるのでは無いでしょうか。
脱着式バッテリーの問題点
欧州議会は脱着式バッテリーは環境問題の改善とバッテリーの品質改善に効果があるとしています。
しかし、消費者としてもスマホメーカーとしてもデメリットの方が多いと言わざるを得ません。
製造コストが上がる(スマホの値段が上がる)
脱着式のバッテリーを採用するとなると、スマホメーカーはこれまでのスマホのデザイン・雛形を流用できなくなります。
脱着式バッテリーを使用する前提のスマホをゼロから再設計する必要があるのです。
そのためスマホの製造コストが上がり、結果的にスマホの値段が上がってしまう可能性があります。
また、各種メーカーが独自に開発してきたバッテリーが搭載できなくなることも問題です。
それらの自社バッテリーは数年後のスマホには搭載できなくなるため、余った分は破棄するしかありません。
バッテリーが故障する頃には本体を買い替える
バッテリーが脱着式になることは我々ユーザーにもメリットが多くはありません。
バッテリーが脱着式になれば、バッテリーの交換・修理が容易になるというメリットはたしかにあります。
しかし、スマホのバッテリーが故障するまで使っている人はどれほどいるでしょうか。
一般的に、スマホは2~3年に1回のペース、中には毎年買い替える人もいるでしょう。
そもそも数年しか使わないスマホのバッテリーを脱着式にしたところで、その機能を活用する機会は多くないはずです。
低品質な互換バッテリーが流通する
欧州議会はバッテリーを脱着式にすれば、バッテリー会社の販売するバッテリーが高品質になるとしています。
確かに、優良企業のバッテリーの品質は飛躍的に向上するかもしれません。
しかし、実際は中国企業などが販売する「悪質な互換品バッテリー」が大量に流通するといった結果になるでしょう。
これらの互換品バッテリーは当然、純正のバッテリーよりも安い価格で販売されるはずです。
コストを抑えるため、中国製の互換バッテリーを購入する人も多く出るでしょう。
低品質なバッテリーは端末の故障や、最悪の場合はスマホの爆発・炎上、最悪の場合は火事の原因になる可能性があります。
ハッキングの原因になる可能性がある
バッテリーとはその名の通り「電池」なのですが、実はハッキングの原因になる可能性を秘めている部品であることをご存知でしょうか。
バッテリーの機能を書き換える・不正なプログラムが含まれるバッテリーをスマホに装着することで、スマホ本体がハッキングされる可能性があります。
かつて、脱着式バッテリーを採用したせいで本体をハッキングされたゲーム機がありました。
それは、ソニーが販売していた携帯ゲーム機「Playstation Portable(PSP)」です。
PSPはメーカー不正なプログラムを書き込んだバッテリーを使用することで不正なシステムをインストールすることが可能でした。
スマホのバッテリーを脱着可能にすると、かつてのPSPのように不正なバッテリーでハッキングされる被害が発生する可能性があります。
まとめ
今回はヨーロッパがスマホの脱着式バッテリーの義務化を検討していることをお伝えしました。
ヨーロッパが義務化するとなれば、アメリカは続くでしょうし、日本もその流れに乗ることになるでしょう。
しかし、脱着式バッテリーを義務化するには様々な問題があります。
最も大きな問題は「バッテリーの規格の統一」です。
これまで各スマホメーカーはそれぞれ独自の技術でバッテリーを大容量、軽量化させ、急速充電に対応してきました。
それぞれのメーカーが長期間をかけて改良を加えてきた多種多様なバッテリーを短期間で共通化させることなど可能なのでしょうか。
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